Nightmare×Knight
[4] Whiteout Road 7
触れ合う身体、溶け合うのは心。
切っ掛けは、何も無かった。
ただ、言葉も交わさず抱きしめ合って、相手を感じていただけ。
吐息を、体温を――心を。
そうして――気づけば、口付けを交わしていた。
◇ ◇ ◇
重ねた唇から体温が流れてくるような錯覚の中に、エイトは居た。
背に回された相手の腕の体温が心地良い。
口から出掛かる言葉を飲み込むようにして、口付けの角度を変えて重ねた。
今、何かを言ってはいけない気がした。
相応しい言葉は、唯一つ。
でも、言える勇気は、まだ無くて。
言葉で関係を崩してしまった過去を、思い出す。
あの過ちを、罪を……そして関係の崩壊を、もう二度と繰り返したくは無かった。
ククールの腕の中は暖かくて――温かくて、幸せ過ぎて。
「……は、ぁっ。」
呼吸をする間が惜しい。
離れたくなかった。触れていたかった。
どこも。全てを。
「ん――……っ」
息を注ぎ、また口付ける。自分から、ククールのほうに。
嘘でもいい。
まやかしでもいい。
夢で無ければ。
こうしてククールと抱き合って、口付けを交わしていることが、温もりが、心が真実であるのならば。
ただ、それだけで幸せだと感じられる。
いつか見た夢が、ここにある。
夢じゃない、幸せが。
離さないで、醒めないで。
どうか、どうかこのまま――消えていかないで。
「ククール……っ……ククール……!」
もう間違えないから。
だから、せめて。
この言葉だけは言わせて欲しい。
今なら、言える。
言えなかった言葉。言おうとしていて封じ込めた言葉。
あの夜、形にしたかった本当の言葉。
あの時――あの、全てが歪んだ方向へ走っていったあの夜。
本当に伝えたかったのは、たった一つ。
「――愛してる、ククール……」
ずっと言えなくて、隠していた思い。
もう、隠さない。
隠さない、から……。
「俺も、愛してる……エイト。」
俺の耳に、そんな言葉が聞こえたのは……気のせい、だろうか?
それとも――夢は、まだ続いてくれるのだろうか。