Nightmare×Knight
[2] Bad Bedmate 8
乞われ、壊れた絆。掴めるものも、攫めるものも散らばって。
『赦してくれ』――と言われた。
それは命乞いであり、少なくとも”仲間”に向かって言うものでは無い言葉はまた完全に関係が壊れたことを思い知らされる刃でもあった。
切々と、確実に。
短い、けれど重い言葉はククールに深く突き刺さった。
――否、自分が突き立てたのだ。
そんな言葉をエイトから引き摺り出したのは、正しく自分なのだから。
「俺が、追い詰めた。」
――追い詰めることしか、出来なくなっていた。
「……なんで、こんなことになってしまったんだろうな。」
ただ、エイト――お前が好きで。
好きになったから、同じように好きになって欲しかった。仲間以上の関係になりたくて、焦って、焦りすぎて――。
――方法を間違えてしまった。
「なんで、こんな……ことに……。」
こんな形で望みを叶えたかったんじゃ無い。こんなふうにしたかったわけじゃない。
流れた血も消えかけた命も、全てが望んだものではなかった。強引に重ねた体の代わりに心を引き剥がしてしまっては、どうにもならない。
酷い事をしてしまった。酷くして、たくさんの傷をつけた。
でも――それでも。
「本当に好きなんだ、エイト――。」
◇ ◇ ◇
『赦してくれ』――なんて、そんな言葉を言う資格なんて無い。
嘘を吐いたものの突き通せず、それどころか酷い言葉を投げて相手を怒らせたのだから、簡単に許されるなんて思っては居なかった。
――なのに。
卑怯にも、そんな言の葉をククールに突きつけて逃げようとした。
端的な、けれど――確実な、言葉。
ただ、刃を相手に突き立てて。
傷つけた傷跡も流れたであろう血も見ないまま、相手の言葉を待たず、自分の中へと逃げ込んだのだ。
「……なんで、こんな風になってしまったんだろう。」
俺は、ククールが――あいつが好きなのに。
抱いた思いを、愛と呼んでしまってしまっていいものなのかは分からない。こうした事には自信が無く、明確な答えが出せそうに無いのだ。
「俺が望むには、おこがましいだろうけど。」
でも――それでも。
「やっぱり好きなんだ――ククール。」
◇ ◇ ◇
砕けた、それぞれの想い。
それらは、さらさらと音も無く流れ散っていく。
指の間をすり抜ける、砂のように。
隙間から流れ落ちる、水のように。
形の無い漠然としたそれが、容を持って崩れ去る。さらさらと細かく、これ以上無いほどに、細かくなって散り去っていく。
それこそもうこの手に掴めない程に塵去って、そうして跡には残らない。
散り散りになった想い以外には、何も。