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Nightmare×Knight

[4] Whiteout Road 1

離れたくない、これ以上。だから、離さないで。



それは、一瞬の出来事だった。

大地が揺れた、と思った。
そして何かが軋む音がして、続いて辺りに轟音が響き――辺りを、状況を把握する間も無く、思考より速くそれは起こった。

それは、まさに一瞬の出来事。
轟音と共に白い瀑布に包まれ、視界が完全に遮られようとするその間際。

「エイトッッ!」
自分の名を呼ぶ声だけが、やけに明瞭に聞こえた。
咄嗟に反応し、何も考えずに目前に伸びた手に掴まった。
何も考えなかった。
そのまま引き寄せられ、腕の中に掴まった時も何も考えなかった。
ただ、離れたくないと思った。

離れたくない人がいた。
この傍に――すぐ側にいて欲しい人が居た。
もうこれ以上、離れたくなかった。
その想いだけが脳裏にあった。

「エイト……っ!」
何の躊躇いもなく抱き留めてくれた相手の手は暖かく、包まれた腕の中は温かく。
何も見えない白い視界の中、それでも確かに見えたのはただ一つの炎。

全ての音が、世界が白亜に飲み込まれるその刹那。
エイトが見たのは、遠い夢。

いつかドコかで望んだ、望みの欠片。


白銀の世界で起こった別れ。刹那、蒼が願ったのは炎。離れたくないと願い、そして遠い夢を見て泣いた。