Nightmare×Knight
[4] Whiteout Road 2
離さない、何があっても。だから、離れるな。
それは、一瞬の出来事だった。
大地が揺れた、と思った。
そして何かが軋む音がして、続いて辺りに轟音が響き――辺りを、状況を把握する間も無く、思考より速くそれは起こった。
それは、まさに一瞬の出来事。
轟音と共に白い瀑布に包まれ、視界が完全に遮られようとするその間際。
「エイトッッ!」
彼が真っ先に考えたのは、ただ一人。
轟音の中、届くか分からなかったが名前を呼んで、手を伸ばした。
掴むより早く手を握られ、一瞬驚きながらも一気に引き寄せた。
声が届くとは、思わなかった。……手をとってくれるとは、思わなかった。
もう完全に、だめなのかと思っていたから。
けれど、例え声が届かなくとも、手が振り払われても、捕まえる気で居た。
何があっても近くに───隣に、居たかった。
もうこれ以上、距離が開くのは嫌だった。
腕の中に引き込んだ身体を、強く抱きしめる。
「ククール……っ!」
泣きそうな声で縋り付いてきた相手の手は冷たく、包んだ身体は凍えていて。
何も見えない白い視界の中、それでも確かに感じたのはただ一人の青。
全ての音が、世界が白亜に飲み込まれるその刹那。
ククールが見たのは、氷の涙。
それが何の為に流されたのかは、考えたくは無かった。