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Nightmare×Knight

[4] Whiteout Road 4

終焉だろうと、始原だろうと関係無い――そこは切なく真白。



白い世界、雪の中。
真白の中に、唯一の色がある。

青と、赤。
俺と、エイト。

俺たちは運悪く雪崩に巻き込まれ、そして――何の因果か、こうして二人きりとなってしまった。

俺が真っ先に考えたのは、エイトのこと。
気がついて直ぐに、エイトを探した。
他の奴らには悪いが、俺はエイトのことしか頭に無かった。

あの瞬間、エイトが俺の声を聞き、差し伸べた手を捕ってくれたことが嬉しかった。
躊躇した素振りも無く、自然に来てくれたことが嬉しかった。
……今は遠い昔のように感じてしまって、少し悲しいものがあったが。
そこでふと、雪崩の時に見たエイトの涙の理由に少し思い当たった気がしたが、今は何も聞くことなど何も無い。
……間違いを犯すのだけは、避けたいから。

吹雪いてはいないが雪が降っているので、ドコか陰に避難しようと考えた俺は片手の手袋を外し、強引にエイトの手を掴んで歩き出した。

手袋を外したのは、少しでも直に触れたかったから――なんて。
馬鹿みたいな、理由。
でも、エイトが怯える素振りも嫌悪も見せなかったので、俺はそれだけでも救われた気がした。
手を離したくなかった――離して欲しくなかった。

ドコもかしこも真っ白で、何の気配も無い世界。
このまま、時が止まればいいと思う。

「なぁ、エイト。……寒くないか?」
何気なく、背後に声を掛けてみた。

「……えっ」
エイトが慌てたような声を上げた。
そして、酷く落ち着かないような様子で視線を彷徨わせ、口篭った。
そんなエイトの様子が少し可愛くて、俺は苦笑して言葉を掬う。
「……いいさ。言ってみただけだ。何てこと無い、気にすんな。」
そうしてまた、歩き出す。

何故か俺は、このまま世界が壊れてしまえばいいと思った。
そうすれば、幸せなままで死ねる。

エイトを悲しませることも傷つけることも、もう無いだろう――。

そんな自虐的な――破滅的な、どうしようもないこと考えた時だった。
エイトが、急に俺の手を引っ張ったのは。

「あっ……洞穴がある! ククール、ほら――休めるぞ!」
一息つけるのが嬉しいのか、それとも寒さが凌げることが嬉しいのか、そう口走るエイトの表情は子供みたいで、俺は堪らず笑ってしまった。
「……良かったな、エイト。」
そう言い返すと、何故か、ふっと――エイトの表情が、歪んだ。
俺の視線に何か感じたのか、エイトは直ぐに顔を背けてしまったが、それは今にも泣き出しそうな表情をしていた。

どうして……どうして、そんな顔をする?
俺はまた、お前が怯えるようなことをしてしまったのか?

訊ねたかった。
肩を掴んで、振り向かせて、強く抱き寄せて――しまいそうになるのを、理性で押しとめた。
浮かんだ疑問も解けぬまま。俺たちは洞穴に辿り着く。
そして、ひとまずそこで休息をとることになった。

――雪は止まず、それどころか吹雪いてきそうな気配がした。


氷に触れながら、雪の道を行く。温もりに、声に、その眼差しに惹かれて止まない、いつまでも。悲しいほど幸せで、胸が痛くて堪らない。