Nightmare×Knight
[4] Whiteout Road 8
溶け合う心、触れ合うのは身体。
切っ掛けは、何も無かった。
ただ、言葉も交わさず抱きしめ合って、相手を感じていただけ。
吐息を、体温を――心を。
そうして――気づけば、口付けを交わしていた。
◇ ◇ ◇
柔らかい唇に触れながら眩暈のするような気分の中に、ククールは居た。
腕の中に引き寄せた温もりが心地良い。
けれどまた暴走して傷付けてしまいかねない気がして、身体を離そうとしたのだけど。
けれど今は、腕を離してはいけない気がした。
出来る行動は、唯一つ。
でも、それが正しいのかなんて確証は、まだ無くて。
行動で関係を崩してしまった過去を、思い出す。
傷付けることはしたくなかった。涙を流させるような真似は、二度としない。
胸に抱いた身体が暖かくて――温かくて、安心する。
「……んっ。」
断続的に続く口付けに、俺は少し戸惑いながらもそれを受ける。
どうもエイトが積極的な気がしたからだ。
いや……これも、俺の単なる勝手な考えなのかもしれなかったが。
「はっ――……」
息を注いだ途端に、また口付けられる。それも、エイトのほうから。
やはりこれは俺の気のせいじゃ無い。
誘うような、口付け。
夢じゃ……ないのか?
こうしてエイトと抱き合って、口付けを交わしていることが、俺の勝手な妄想じゃないのか?これは、現実なのか?
怯えていない、震えてもいないエイトを、こうして腕に抱くのはいつ振りだろう。
いつか望んだ結末が、ここに広がる。
真実でも幻想でも、もうどちらでもいい。
離さない……離したくない。
だからどうか――このまま、醒めないでいてくれ。
「エイト……っ……エイト……!」
もう罪を重ねないから。
俺を呼ぶエイトの声は、酷く甘い。
夢のような錯覚に、涙が出そうになる。
愛してる、エイト。
それは言えなかった言葉。言いそびれた言葉。
あの夜、形にして伝えたかった本当の言葉。
あの時――あの、全てが歪んだ方向へ走っていったあの夜。
本当にしたかったのは、こうして抱きしめて、そして……。
「――愛してる、ククール。」
心の告白と重なるようにして、エイトの口から漏れた言葉に、俺は凝然とする。
夢じゃない。
妄想じゃないと確信して、俺は抱きしめる腕に力を込めた。
更に夢では無い証に、心の中のその告白を、後から重ねるように返す。
「俺も、愛してる……エイト。」
夢の続き。幻覚ではない現実であることを、しかと認識しながら言葉を紡ぐ。
終わるな。どうかまだ終わってくれるな――この幸せを、もう少しだけ。