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Daily Life *K 【18】

深夜の戯れ狂騒劇



人の気配が静まった夜の、ある宿屋の一室。
室内に響く、僅かな布擦れの音。

――そして、微かな声。

「震えてるな……怖いのか?」
「いや、怖くなんか…ない、ですけど……っ」
「ふぅん?じゃ、何で震えてるんだよ。まさか、武者震いってんじゃねぇだろ?」
「違、う…っ……ちょっ、ドコ、触って」
「ドコって――肌。」
「それは…そう、ですけど…そうじゃ、っ…ん、…は、ぁ…――だ、だいたい、どういう展開で…こんな事、に、なったんです、かっ…!」
「お前なぁ……その話し方、なんとかなんない?こういう場面でそれじゃ、色気ねぇだろ。」
「無茶、いう……だっ、て……っ」
互いの熱が上がりかけた丁度そんな時に、”それ”は訪れた。

――コンコン。
と、ノックの音に続いて――声。

「エイトー。もう寝ちゃったー?」
ギクリ。

「ゼ、ゼシカっ!?な、何でこんな夜中に来るんだ!?」
「……っ、知りませんよ!――あっ!?そうだ、どいて下さい…っ、服、服を着ないと!」
「……気取られたか?いや、まさか…な?」
「こら、くつろいでる場合か!お前も服、整えろ!それか隠れろ!」
「おー、その喋りかた、喋りかた。何だよ、もう少し早くそうくれば――」
「――いいから行動を起こせ!」
どたばた、どたばた。

「エイトー?起きてる、よね?…ちょっと、入ってもいい?」
「わぁぁ!ちょっとゼシカ、待って下さい!今、片付けてるんで!」
「ああ、あたし、少しくらい汚くても気にしないわよ?」
「俺、――いや、私が気になるんで!とにかく!すぐ済むんで待って下さい!」
「へー、お前の一人称って俺なんだ?意外だな。」
「だから、そこっ!平然としてんじゃないっっ!」

それは、ある深夜に起きた戯れ。
そして以降に起こる騒動の発端に至る夜話の、少し前。


day after day