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Daily Life *K 【19】

とばずがたり



その日。戦闘中に投げたブーメランが、戻ってこなかった。
なので、一先ず槍と剣でその場をしのぎ、戦闘後に探しに行った。
確かこの辺に飛んでいった筈だと見当をつけて探すも、なかなか見つからない。

――無くした?

もしそうなら、作り直さなければいけない。
なにせ、あれはただの市販のブーメランじゃなく――”ハイ”ブーメランだから。
つまり、高い。
節約生活の旅をしている現在でそれは非常に大切なことだから、とにかく必死になって辺りを見回した。
何も見つけられない状況に溜め息しつつ、ふと樹の上を見上げてみたら――。

――あ。

「あった! って、……え――」
喜びは一転して、崖の上から転がり落ちる。
「え、えぇぇぇぇー……」
なんでまたこうも見事な場所にあるのだろう。
寄りにも寄って、自分よりもかなり高い背の木の上――正しくは、その枝に――ブーメランが、あった。まるでこちらを見下すかのように。……というのは、嘘だけども。
さて、それはそうと。

「えーと。」
唖然としながらも、方法を考える。
木登り…は、あまり得意な方ではない。

「――あ。そうだ、トーポ! ……は、――」
そう口に出した次の瞬間、ガクリと肩を落す羽目になる。
「――そうだ……馬車の中に置いてきたんだっけ。」
危険だろうと思い、そういう行動をとったのだが……まさか、こうも後悔する羽目になろうとは。
「ああ、今は君が酷く恋しい……。」
額に手を当てながら、呻く。
「はあ……どうしよう、ほんと。」
そうして暫く、待ちぼうけ――いや、立ちぼうけるトロデーンの優秀兵士長。
突風が吹いてくれればいいのだけども、依然として空は見事な快晴、全くの無風状態。
望みは、どうやら叶ってはくれないようだ。
「はぁー……あああああもう……。」
長々と溜め息を吐き、エイトは泣きそうな顔で空を仰ぐ。

――さて。一方、その頃。
「エイト……エイト! どこだ、返事しろ!」
「兄貴ーーーぃぃぃ。何処に居るんでやすかーーーーぁぁぁ!」
「エイトー、どこーーー? 近くに居るなら、返事してよーーっ!」
戦闘後、急に姿を消したエイトを仲間が探し回っていた。
一名を除いた二名ほどが、半狂乱になりながらエイトの名を叫んで必死になっている。
それから。
どうにかブーメランを手にし、意気揚々と仲間の元へと戻ったエイトは、悲観で疲れ果てた仲間の姿を見ることになる。
そして全員から盛大に説教を受けるのだが、それはまだ小一時間ほど後のこと。


day after day