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Daily Life *K 【20】

ククール大作戦



「俺に名案がある。……任せてくれ。」
ゴルド聖地でマルチェロと対峙した時、戦闘開始前にククールからそんな事を耳打ちされた。
過去に色々確執があったものの、やはり兄と戦うのは辛いものなのだろう。
ククールがいつになく緊張した面持ちでいたので、俺は何も聞かずに頷き、そのまま彼に今回の戦略を託すことにした。
まあしかし、いま思えばこの時に下した判断は甘かったわけだが。

一瞬、何が起こったのか分からなかった。が、バリッと音がした方へ視線を落とし、その惨状が理解できた瞬間に、俺は何とも情けない悲鳴を上げることになる。
ドコの世界に、戦闘中に仲間の服を剥ぐ阿呆がいる?
上半身だけだったとはいえ、いきなり服を脱がされ素肌を晒された。
半狂乱になりながら急いで服を掻き込めば、したり顔をしたククールが振り向いて、「今のうちにマルチェロを叩くぞ!」と言った。

こいつに作戦の指揮を取らせた俺が、阿呆だった。
こいつが感傷しているなんて感じた俺が、馬鹿だった。
噴き出したマルチェロは多分、ククールの思惑どおり、隙だらけだったんだろう。
しかし、俺の矛先は正面の敵ではなく――隣にいた阿呆、たった一人。
会心の一撃をククールに叩き込むついでにマルチェロも叩き伏せてその戦いを終わらせた後、すっかり崩れたゴルド聖像を見上げながら、溜め息を吐いた。

この出来事以降、俺が戦闘中にククールの進言に耳を傾けなくなったのは言うまでもない。


day after day