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Drago di Isolamento

04. いっぱしの不快虚飾?



……。
……。
……えーと。

俺は今、非常に緊張している。
原因は隣――肩を並べて歩いているククールが、先程から俺の方を窺っているからだ。
観察、というか様子見、というか。
とにかく、凝視されている――ような気がするのは、俺の勘違いじゃない筈だ。
俺は壊滅的に社交性がなっていないが、視線察知に関して言えばかなり鋭いほうなのだ。
試しに、バンダナを被り直す――振りをして、チラッと横を確認してみた……ら。

うん、やっぱり俺を見ている! 確認終了!
……なんて、視線の再確認はともかく。
正直言って、俺は非常に狼狽している。なんというか、心臓が大混乱の舞を舞っている状態だ。――とは言っても、毎回言うようだが態度にも表情にも出ていないから分からないんだろうが、内心はそうなのだ。
……いや、というかね?

――俺、何かしたか?
実は、ククールが仲間になってから現在まで、俺はこいつと”会話”どころか”対話”すらしていないのだ。
言葉を交わしても、それは文章でなく用件のみを伝える単語だったりする。

それは例えば――確認の時。
「……薬草は、持ったか。」
「え?あ、ああ。」
「では……行くぞ。」
「う……お、おうよ。」

それは例えば――戦闘の時。
「お前は、右を狙え。……ゼシカの補助が来るから、それで仕留めろ。」
「お、う……分かった。」

――こんなの、会話じゃない。伝言ゲームだ。
いや、俺の方から話しかけないのもあるんだろうが、何故かアイツもコッチに話しかけて来ないのでどうにも距離が縮まらないのだ。他の仲間――ゼシカやヤンガスや王や姫(馬状態だけど)には話しかけているので、人見知りってわけじゃないのは確実なんだけど――。

俺だけ――違う。

……うう。
そりゃ、こんな仏頂面で何考えてるのか分からない暗い奴に、進んで接してくる奴なんて居ないのは知ってるし実感してるし体験してるけど。
……けど、さ。
俺だって、仲間なんだよ?リーダーなんだよ?
ヤンガスやゼシカにしてるみたいに、話しかけてきてくれよ。俺、頑張って対応するからさ。(なんか切ないところだけど、気にしない!)
あと、口下手どころか何か色々壊滅的だから、文章か単語しか返せないけど!(あ、これは問題か。)
漏れなく無愛想も付いてくるけど!(これも問題、だよなぁ。)
あああ。で、でも、でもでも!
じっくり丁寧な対応を(心持ち)させて頂きますから、俺も構って――!

……って。なんというとんでもないことを心の中で叫んでるんだろう俺は。
はぁ。空しい。
我に返った俺は、そっと溜息に似た吐息を吐くとククールの視線に気づかない振りをして黙々と歩くことにした。
町までは、あと少し。それまで我慢すればいい。
それに、見られているって事は、完全に無視されているわけでもないようなので、一先ずここで妥協しておこうと思う。
うん。無視はされていないからな!
……。
さ、されてない、よな?

空を仰ぐと、見えるのは青。
良い天気だな、今日は。

――そうだ。
次の町に着いたら、ちょっと昼寝でもしよう。
木陰とか、物陰とか、どこか良さそうな場所でも見つけて。
俺は次の町に着いたら休憩する、という目的を胸に抱き、歩く速度を上げる。
少し眠れば、この沈みかけた気分も回復するだろうと考え――それは実に名案だと思ったので、自然と足が速くなっていった。
それは、ゼシカとヤンガスと王と姫(馬状態)の「早すぎ(ますぜ)(よ)(じゃぞ)エイト!」と背後から呼び止められるまで全力疾走していた自分に気づかないほどでいて。

あああ。ついうっかり!
駄目リーダーで、本当にすみませんーー!