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Drago di Isolamento

07. 悲喜引き篭もり



ふあ~ぁ。
はぁ。今日も一日、良い天気になりそうだなぁ。
……はぁぁぁぁ。

パルミドでククールに突き飛ばされてからというもの、俺の気分は見事にへこたれたままだ。
うう。そうだよな……。そうだよなぁ……。友達みたいな感覚で、つい馴れ馴れしくしていたけれど、ククールにとって俺はまだ、そこまでの関係じゃ無かったんだよなあ……。
一人でそう思い込んでたんだよな。
勝手に勘違いして、突っ走って――挙句、折角散歩に誘ってもらったのに、早くも体調を崩して迷惑掛けて……あの様だ。
無表情でろくに会話も出来ない癖に、一丁前に仲間ぶっていた俺が鬱陶しくなって、ククールはあの時、俺を突き飛ばしたんだ、きっと。
友達面するなって。
気安くするなって。

……はぁぁぁぁ。
あの日以来、俺はその時の光景を悪夢として見るようになった。
連日連夜うなされては(とは言うものの、傍目にはちょっと身動ぎしているようにしか見えないが)、一人で静かに目を覚ますという旗から見れば恐らくは不気味な行為を繰り返し、結果、睡眠不足になってしまっていた。

ちなみに、今日もその悪夢のせいでバッチリ目が覚めてしまい、こうしてまだ空が白み始めている中で一人ぼんやりと立ち尽くしている羽目になっているのだ。
だって、やること無いし。
こんな早くに食事を作っても皆が起きる時間まではまだ結構あるから、冷めてしまう。
そうなったら美味しくない。料理は、温かいほうが美味しいものだ。それに、マズイ食事を皆に出そうものなら、俺はきっともう、どこまでも嫌われるだろう。
戦闘と家事くらいしか他に取り得が無いのだ、俺は。
だから、これ以上嫌われては……。

い~や~だ~~!
そんな今更! 今の仲間に嫌われたら、俺は……俺は本当に一人ぼっちになってしまう!
朝日が昇る中、俺は一人(心の中で)じたばたする。
そのまま所在げなく、ぼーっと日が昇るのを見つめていたら、欠伸が出そうになった。
これは一体何の条件反射だ、と思いつつも欠伸は出かかって。
けれど、こんなところで大口開けるのも何だかな、と考え、ぐっと噛み殺して耐えた。
でもやっぱり涙腺ばかりはどうにもならず、涙が出る。
こんな時に限って、俺の感覚は無駄に反応してくれるもんだ。
泣きたい時に泣けなくて、それで今まで色々苦労してきたというのに。

とりあえず、目元を手の甲で拭った。
何か、これじゃあ泣いてるみたいだな、と一人そんなことを思って苦笑する。誰にも見られない涙。ほんと、空しい。
でも、この苦笑さえ表情に出てくれないんだろうな。
いや実際、泣きたいくらいの心境だけど。
でも、俺が求めているのはこういうのじゃ無いんだけどなあ……。はぁ。

――そうだ。俺のことは、どうでもいいんだよ。ククールだ。ククールをどうにかしないと。
どうすれば、また前のように接してもらえるんだろう?
どうやれば、また話しかけてもらえる?
完全に嫌われた俺。ここは土下座でもするべきか?

――いや、でも……待てよ?
ククールに突き飛ばされたとはいえ、まだ面と向かって、嫌いだ!と言われた訳じゃないんだよな。ってことは……ちょっと希望が残ってるのか?
いや、まあ……思いっきり、「離れろ!」と言われたけど。あの拒否反応だけとっても「嫌いだ」と意思表現には充分だけどさ。
……。
……。
うわぁ。何かまた微妙に落ち込みそうだ。
いやいや、落ち着け俺。よく考えるんだ俺。
さて。
ククールとの仲を取り繕いたいと思います。どうしたら良いでしょうか?
はい、レッツ・シンキンタイム!
えーと、えーと、えーと、えーと……。
……。
……ダメだ。
俺、よく考えたら友達いなかったから、全然分かんないし! あいたー。初っ端で躓いた!
どどど、どうしようー。ククールとはもう、このままなのかー?!
この、駄目なまんまで旅をしろと仰るー!?

……む。待てよ。
確かこういう時、何か格言みたいなのがあったよな。ええと。

――時が全てを解決する……だっけ?
うーん……とりあえず、これを信じて実行してみようか?
だって俺が何かしようとしたら、大概全部が悪い方向へ行くような気がするからなぁ……。気がするどころか、現実に真逆へいってくれてるんだよなぁ。ああ切なくて涙が出そう。
もういっそのこと、潔くククールには近づかないようにしておくか?
ククールも、俺のことなんか鬱陶しい男って感じてるだろうし。……うう。鬱陶しい奴でゴメン。こんな俺がリーダーでほんとゴメンナサイ。
俺は拳を固め、決断する。

一つ。これ以降、ククールの邪魔をしないように距離をとること!
二つ。目障りにならないように、視界からも外れること!

よし。これで俺に対する鬱陶しさは軽減されるだろうし、ククールとの友好度だって少しづつ回復してくれるだろう!
……だと、思いたい。願いたい。切実に。

ふと顔を上げれば、空が白み始めているのに気づく。

ん? あれ――辺りが明るくなってきた。
そうか、朝だな。皆がもうすぐ起きる時間だ。
よーし。今朝は腕を奮って豪華な食事に挑戦してみるか。
俺の悩みが、ちょこっとだけ解決した記念だ!